忘れな草の栞
ゴクリと最後の一口のトーストを飲み込む。
喉が少し渇いているから飲み込むという動作も一苦労する。
心配してるのかしてないのか、マイペース過ぎて考えてることがいまいちよく分からない、私の中ではそんな立場にいるお母さんが玄関の扉を開いてくれた。
「ありがとう!!」
「学校まで間に合う?」
「自転車乗ってとばせば大丈夫だから!」
車庫を開け、中に入る。
つい先日、双子の姉である亞梨子(ありす)の自転車のタイヤがパンクした。
亞梨子本人はあまり自転車に乗らなかったから、今度の休みに直しに行くらしい。
私がなぜ、亞梨子のパンクした自転車の話をしているか、それは……
パンクした亞梨子の自転車が目の前にあるからだ。