夜明け前
「佳奈子って批判的だよね」
「批判的?」
「そう、大人に批判的」
向かい合ってパンをかじっているのは、隣のクラスの麻里子だった。
佳奈子はストローを口から離した。
「そうかな」
「だって、聞いていたら批判ばっかり」
「麻里子は全然、感じないの?」
「うーん」
麻里子はパンをあわてて飲み込みながら続けた。
「思わないことは無いけど、そんなの仕方ないことだし」
「仕方ない?」
「そうでしょ、立場違うんだから」
佳奈子は、なんて冷めたことを言うのかという目で麻里子を見た。
それが大人な考え方?
「よくわからないなあ」
佳奈子は言葉を濁した。立場が違うなんて言われたら、もう返す言葉なんて無い。
「だって、そんなのいろいろ言っても何も変らないじゃない。そんなの、エネルギー使うだけ損だもの」
麻里子はさらさらとそう言った。みんなわかってるのよ、っていう調子で。
麻里子たちは演技しているわけではないのかもしれない。
もう、とうの昔にいろんなことを諦めて、もうそれはそういうものなのだと納得してしまっているらしい。言っても同じ。何も変わらない。それは確かだ。
そんなことで悩んだりイライラしたり、無駄なエネルギーを使うことは、自分を壊してしまうことになる。それも正論だ。
「けど、そんなのつまんないね。何も楽しくないじゃない」
「楽しくなんてなくていいの」
麻里子は即答した。
佳奈子がこの一年間、ずっと悩んできたことに即答した。
佳奈子は麻里子の顔を見つめながら、次の言葉を待った。
「批判的?」
「そう、大人に批判的」
向かい合ってパンをかじっているのは、隣のクラスの麻里子だった。
佳奈子はストローを口から離した。
「そうかな」
「だって、聞いていたら批判ばっかり」
「麻里子は全然、感じないの?」
「うーん」
麻里子はパンをあわてて飲み込みながら続けた。
「思わないことは無いけど、そんなの仕方ないことだし」
「仕方ない?」
「そうでしょ、立場違うんだから」
佳奈子は、なんて冷めたことを言うのかという目で麻里子を見た。
それが大人な考え方?
「よくわからないなあ」
佳奈子は言葉を濁した。立場が違うなんて言われたら、もう返す言葉なんて無い。
「だって、そんなのいろいろ言っても何も変らないじゃない。そんなの、エネルギー使うだけ損だもの」
麻里子はさらさらとそう言った。みんなわかってるのよ、っていう調子で。
麻里子たちは演技しているわけではないのかもしれない。
もう、とうの昔にいろんなことを諦めて、もうそれはそういうものなのだと納得してしまっているらしい。言っても同じ。何も変わらない。それは確かだ。
そんなことで悩んだりイライラしたり、無駄なエネルギーを使うことは、自分を壊してしまうことになる。それも正論だ。
「けど、そんなのつまんないね。何も楽しくないじゃない」
「楽しくなんてなくていいの」
麻里子は即答した。
佳奈子がこの一年間、ずっと悩んできたことに即答した。
佳奈子は麻里子の顔を見つめながら、次の言葉を待った。