夜明け前
このまま、どこかに消えてしまいたいと思うことがあった。
それは、死にたい・・というのとは少し違う。
どこか、ここではない世界に瞬間移動したい気持ちになるのだ。
もちろん、そんなことが現実にできるはずも無いことぐらい分かっているのだけれど、佳奈子は毎日、毎日、それを心から願った。
毎日のこの瞬間から解放されたくてたまらなかった。
最後の地下鉄が入ってきた。これに乗らないと遅刻。
(だめだ、今日は行けない)
佳奈子は、相変わらずベンチに座ったまま、地下鉄のドアを見つめた。
発車を知らせるベルが怒ったように鳴り響く。
早く早く早く早く・・と急かすように鳴り響く。
佳奈子は目を閉じた。静かにドアが閉まる音がした。
地下鉄は、音も無く遠ざかっていった。
あんなにごちゃごちゃしていた人込みは、みんなあの四角い乗り物に詰め込まれて、ホームには誰も居なくなった。ベンチにただ一人残された佳奈子は、これからしばらくの時間、同じことを何度も何度も繰り返さなければならなかった。
そのとき、突然、ポケットの中のケイタイが騒ぎ始めた。
佳奈子はびくっとした。こんな時間にケイタイが鳴ることは滅多に無い。
いつもなら、サイレントモードにしているはずのものが、今日は、たまたまし忘れていたことに気づいた。慌ててポケットから取り出して見てみると、知らない番号だった。おかしい。こんな番号は知らない。
それは、死にたい・・というのとは少し違う。
どこか、ここではない世界に瞬間移動したい気持ちになるのだ。
もちろん、そんなことが現実にできるはずも無いことぐらい分かっているのだけれど、佳奈子は毎日、毎日、それを心から願った。
毎日のこの瞬間から解放されたくてたまらなかった。
最後の地下鉄が入ってきた。これに乗らないと遅刻。
(だめだ、今日は行けない)
佳奈子は、相変わらずベンチに座ったまま、地下鉄のドアを見つめた。
発車を知らせるベルが怒ったように鳴り響く。
早く早く早く早く・・と急かすように鳴り響く。
佳奈子は目を閉じた。静かにドアが閉まる音がした。
地下鉄は、音も無く遠ざかっていった。
あんなにごちゃごちゃしていた人込みは、みんなあの四角い乗り物に詰め込まれて、ホームには誰も居なくなった。ベンチにただ一人残された佳奈子は、これからしばらくの時間、同じことを何度も何度も繰り返さなければならなかった。
そのとき、突然、ポケットの中のケイタイが騒ぎ始めた。
佳奈子はびくっとした。こんな時間にケイタイが鳴ることは滅多に無い。
いつもなら、サイレントモードにしているはずのものが、今日は、たまたまし忘れていたことに気づいた。慌ててポケットから取り出して見てみると、知らない番号だった。おかしい。こんな番号は知らない。