希望
(2)


部屋の中は、辺り一面ゴミや雑誌、衣類などが散乱している。




豊子ともみ合いになる前から、部屋の様子は殆ど変わりはなかった。




床には、うっすらと埃が積もっている。




キッチンには、使用後の食器が山積みになっていて、そこから発する生臭い匂いが、部屋に充満している。




悟は、平常心を取り戻そうとすればするほど、匂いや散らかった部屋が気になり、苛立ちが募る一方だった。




『くそっ!』




悟は、死体の脇腹を殴った。




その拍子に、豊子の腹に乗せてあるタオルにくるまれた手が、ゴロンと転がり落ち、タオルがほどけた。




『どうして…俺を怒らせるんだぁ?』




静かに立ち上がり手を拾うと、まるで別人になったかのように、近くに置いてあるゴミ箱におもいきり投げ捨てた。




『床を汚すんじゃねぇ!!』





悟は、返事をする事のない豊子に怒鳴り散らしながら、何度も何度も蹴り飛ばした。


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