スノー*フェイク
「そうだ。この店が、あの“ふわとろ絶品ロールケーキ”を作ってんだよ」
『えっ……ええええ!?だ、だからブッシュ・ド・ノエルも同じ食感なんですか!?!?』
「あァ。俺もこの店のこと知った時は驚いたぜ」
蕪城先生は得意気に鼻を鳴らし、未だ湯気の立つコーヒーを喉に流し込んだ。
……す、すごい!
こんな素敵なお店があったなんて、知らなかった!!
『先生、すごい!あたしもうびっくりしすぎてて…!!』
「見てりゃわかるよ。…ま、お前が喜んでくれたなら本望だな」
なんともカッコいい台詞を添えて、蕪城先生は笑みを浮かべた。
少しだけえくぼが見える、いわゆる微笑のレベル。
その笑顔に思考がとろけそうになり、あたしはパッとケーキに視線を戻した。
ど、ドキドキしてる…!
『(……け、ケーキ!そう!今大事なのはケーキ!!)』
意味のわからない暗示を唱えながら、あたしはケーキを食べることに集中した。