スノー*フェイク
「……お前、確信犯か?」
『なんの話ですか?』
「……………」
突然、先生が黙ってしまった。
妙な居心地の悪さを感じて、意味もなくティーカップに手を掛けた。
ここまで来たら飲むしかないか、そのまま持ち上げてそっと口に運ぶ。
「……お前、さっき」
『え、はい?』
「好きなやつとケーキ食えば良かったのに、っつったろ」
自分で言ったくせに、それを蕪城先生の口から聞くと虚しくなった。
『言いました、けど?』
何故かそこで蕪城先生は立ち上がり、あたしの後ろに立った。
振り返ろうと思い首を捻ると、蕪城先生の両手があたしの頭をガシッと固定した。
耳に、先生の冷たい手が触れてる。
『か、蕪城先生…?』
「………それ、もう叶ってんだよ」
えっ?
聞き返すより早く、首になにかひんやりとしたものが当たった。
…な、なにこれ。
鎖骨より下に目をやると、そこにはケーキを模したネックレスが掛かっていた。
『蕪城先生っ…!』
急き立てられるように振り向くと、顔を真っ赤にした蕪城先生がいた。
その熱が伝染したみたいに、あたしの顔も熱くなっていく。
「……メリー、クリスマスな」
はにかんだ表情をした蕪城先生の端整な顔が、段々近付いてくる。
……え、近付い
ちゅっ
「…………ケーキより甘いとか、シャレになんねぇな」
あたしが驚いて声を出せないのを良いことに、蕪城先生は何度も唇を重ねた。
甘い。
甘すぎる。
ケーキなんて目じゃないくらい柔らかな感触も、
脳みそからとろけるような甘い痺れも、
このまま1つになって溶けてなくなりそうな唇も、
「……お前が好きだ、春姫…」
その、耳元で囁く掠れた低い声も。
『かぶら、………みくず、先生………あたしも好き、ですっ…!』