スノー*フェイク
◆4日前
→でるくいはうたれた
蕪城美葛、24歳。
―――数学教師。
「……で、これを積分して…」
あれはつい、昨日のこと。
お互い皆に素性がバレたら困る、ということで。
あたしと蕪城先生は協力関係に―――つまり、共謀することにした。
『(……まぁ、だからって、なにも変わらないんだけど)』
秘密の共有、なんてすごく甘美な響きなのに。
今日も今日とて、理解できない蕪城先生の数学の授業を受けている。
…いや別にね、残念がってるとかじゃないからね?
だっ断じて違うから!
「…赤城さん」
―ドキッ!
授業時にしか掛けない眼鏡をクイッと押し上げた蕪城先生が、目の前にいた。
「今日から放課後、数学の補習授業をします。昨日の場所に来てくださいね」
にこりと有無を言わせない笑みを浮かべて、蕪城先生は言った。
『…………わかりました、先生』
周りの皆が羨望の目で見てくるのをひしひしと感じながら、あたしは頷いた。