スノー*フェイク
それでもあたしは、今日も学校に行かなきゃいけない。
蕪城先生に合わせる顔がないことは、重々承知で。
「る…春姫っ!」
お嬢様に似つかわしくない、バタバタという音。
あたしの席まで走ってきた華苗は、苦しそうに肩で息をしていた。
『おはようございます、華苗さん。…どうかなさいましたか?』
柔らかく微笑めば、華苗が顔を強張らせたのがわかった。
……まさか。
「はぁっ…はっ……昨日のお茶会、楽しかったですか…?」
『…っ……』
なんで。
そんな、確信めいた瞳をしてるの。
あたしのことを、躊躇いなくまっすぐ睨み付けて。
……違う。
睨み付けてなんかない。
…なんでそんなに、泣きそうな顔をしてるの…?
『………昨日は用事があったので帰りましたわ。それがどうかしたんですか?』
嘘を重ねる。
無駄な足掻きだとわかっていても、あたしはそれを認めるわけにはいかない。
華苗と繭にもし、なにか遭ったら―――
『(……考えだけで泣きそうだよ)』
目を見開いた華苗は、唇を噛んだまま無言で踵を返した。
……お茶会に行かなかった理由が、バレてる…?
なんで?
胡桃坂さんが言ったの…?
それとも、教会にいたのを見られてた……?
ぐるぐると終わらない思考を断ち切り、あたしは授業の準備を始めた。