スノー*フェイク
→まじめなえりーとせんせい
やっと教会に着いたあたしたちは、聖歌を合唱する練習を何度か繰り返した。
『(…アヴェ・マリアだよね)』
歌の授業は、嫌いじゃない。
皇鈴学園の授業は色々と凄いから、なにをしても慣れなくて疲れるんだよね…。
例えば……バイオリンにピアノ、茶道に生け花、バレエ。
どれも厳しい指導ではないけど、周りの友達はそつなくこなしてしまう。
……あたしはもちろん、今年初めてやったものばかりで。
『(疑われてる、かなぁ。お嬢様っぽくないって…)』
チャイムが鳴ったところで楽譜をぱたりと閉じ、荷物を片付け始めた。
はぁ…今からまた、長い道程を歩いて教室に戻るのか…。
『(ああもうやだ、外めっちゃ寒いし!)』
こうも広いといい加減、校内に電車かバスを走らせて欲しい…!
そんな幻想に期待を抱きながら、あたしはまた華苗と繭と一緒に教会を出た。
華苗はどこか、いつもの3割増くらい上機嫌だ。
「アヴェ・マリアは素敵な歌ですわね♪」
上品な笑いを口元に称えながら、華苗が柔らかく言った。
『……本当に素敵、ね』
見惚れてしまいそうなくらい自然な動きに、あたしはひっそりと感嘆の吐息を零した。