スノー*フェイク
だ、だっだだっだだだだだだだっ…!?
テンパるあたしを他所に、蕪城先生は優しく頭を撫でてくれていた。
どこか大人の余裕を感じるその仕種に、思わず唇を尖らせる。
……でも、夢みたい。
抱き締められてるんだ。
蕪城先生に。
あたし、が。
「ん、泣き止んだか?」
笑いを含んだその声音に、ムッとしながら頬を膨らませる。
…さっきから、なんか先生が大人っぽい。
タイムセールの時間帯を把握してるような変な人なのに、なんかムカつく…。
『っず、ずずっ……ひっく、…は、……も、平気、でっ…』
ずるずると鼻をすすっていると、蕪城先生がまた小さく笑った。
背中に回っていた腕がするりと外されたかと思ったら、蕪城先生が身体を離してあたしの顔を覗き込んでいた。
「ぷはっ!ひでぇ顔してんなぁ!」
『なっ…ななななななっ!しょ、しょうがないですよ!!』
蕪城先生はにやにやと満足そうに笑みを浮かべると、あたしの頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。
…甘い痺れが、背筋をぞくりと走る。
『かっ!かぶ、らぎ…先生っ…!』
「んー?」
涙でぐちゃぐちゃになった、視界の中。
蕪城先生の笑顔があたしに向いてるのがわかると、口は自然と動いていた。
『――――蕪城、先生』
きたる“Xデー”まで、あと2日。