スノー*フェイク
黒塗りのリムジンに十数分揺られ、目を見張るような豪邸に着いた。
……す、すごいっ…!!
遮光ガラスの車窓から食い入るように見つめていると、隣に座っている華苗に笑われた。
ぽかんと開いていた口を慌てて閉じる。
ま、また庶民らしさ爆発してた…!?
華苗は口元に手を添え、顔を赤くしてるあたしを見て笑い声を小さく零した。
「私の叔母様の邸宅に造りがよく似ていますわ」
「ええ、わかります。あのレンガの色合いがまた…」
セレブトークに入ってしまったため、いそいそと話から抜け出した。
にしても……胡桃坂さんの家、ほんとにお城みたい…。
ていうか、さっき門をくぐったのに……なんであんなに邸宅が遠いの?
目を凝らすと、ここからずっと先の方にまた門が見えた。
『(…もしかして、あれが玄関なのっ…!?いやいや、これ何坪あるの!?)』
ゆったりとシートに身体を沈めている華苗と繭が神々しく見えた。
…こういう時、育ちの違いがでるんだね。
自分自身に苦笑し、あたしも前に向き直した。
あんなに遠かった門が、もう目と鼻の先にあった。