同じ孤独を感じている

『先ほどは、ほかのスタッフがご迷惑をおかけしたようで…。申し訳ございませんでした。』


深々と頭を下げる彼女に、俺は意味が分からなかった。


先ほどもなにも、ここのスタッフに迷惑をかけられたら覚えがない。


『頭を上げてください。迷惑ってなんのことですか??』


頭を上げた彼女の表情は、少し戸惑っていた。


『さっきカウンター内で、お客様に聞こえるくらい大きな声で…その…。』


あぁ、そういう事か。


さっき飲み物を待っていたときの話を、彼女はしているのか。


『気にしないでください。悪い気は全然してないし、むしろ嬉しいですよ。』


これは本音。


嬉しいどころか、浮かれているのも、また事実。


『そう言っていただけると助かります。ほかのスタッフには、私の方から言っておきますので。』


俺の言葉を聞いて安心したのか、ほっとした表情になった。


『では、私は仕事に戻ります。急にすいませんでした。』


軽く会釈をして歩いていった彼女。


凛とした後ろ姿と、なびく黒髪に見とれていたのも、また事実。

< 14 / 22 >

この作品をシェア

pagetop