同じ孤独を感じている
『…え??あ、あの…。』
正直、どう対応していいかわからなかった。
お客さんから連絡先を渡されたのなんて初めてだし、ましてやスタッフから人気のあるお客さんからだ。
戸惑っている私をよそに、彼は優しい目で黙って私を見ていた。
そして私は、この店での彼の立場を思い出した。
彼は“女性スタッフから、かなりの人気を得ている人”
慌てて後ろを振り返った。
幸い、店が混んでいるせいか、他のスタッフに見られてはいないようだ。
『だいたい19時以降は空いてるから。じゃ。』
そういうと、彼は今まで緩めていたネクタイをきっちり締めて店から出ていく。
いなくなった後、渡された紙を見た。
市ヶ谷光
080-****-****
****.****@docomo.ne.jp
『いちがや…ひかり…??』
彼の名前を呟いたとき、私の世界が微かに変わった気がした。