この声が枯れるまで


『俺、斉藤タクミって言うから。仲良くしてな?』


『うん!!』


チラッと横を見ると、
ゆかともう一人の人が仲良く話をしていた。


『実はね、あいつ、あの子に惚れたみたいよ?』とタクミはこっそり言う。

『あいつ?』

『あぁ、疾風《はやて》の事な!!』


疾風とは今ゆかと会話をしている子だ。
どうりで頬が赤いわけだ。

『そうなんだ!ゆかもすごい照れてる』



『応援しようぜ?』


『そだね!!』


二人は恋に墜ちたと思ってもいいよね?
応援したい。ゆかの恋を、

『俺達クラスんとこ戻るわ。じゃあな百合』



『タクミ君じゃあね~』

タクミは手をクラスの場所に戻って行った。

私はゆかを見る。

『ゆ~か!!いい感じだったじゃん!!』


ゆかの体をつつきながら、笑顔で言う。
ゆかは頬を手で包み込み、幸せそうにこう言った。


『あかんわ~どないしよう…好きになってまうわ~…』



『いいじゃん!疾風君かっこよかったしさ!』



『うん~』



みんなの恋が少しずつ、動き出している。


でも私の恋は、動いてくれないようだ。


だが本当は動いていた事、私は気付かなかった。



そして入学式も終わり、帰りのホームルームの時間。


『なぁなぁ!!』

こう隣の席の光輝が話しかけて来た。


私はそっけなく答える。
『何?』


『冷た~。さっきタクミと話してたろ?』


『何で知ってんのよ?』


見られたという焦りなど全く見せず淡々と答える私。
光輝は怪しく笑って、
言葉を足していく。



『俺、タクミと同じ中学なんだよな!』




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