この声が枯れるまで

─プルプル…


私は誰かに電話をしていた。


『はい?』


『ねぇ今から出れる?
あの約束…私守れなかったから…今から守れるかな?』



『いいよ…百合…大丈夫?ケガ…』


『全然大丈夫!
じゃあ今から来て?
秘密の場所に──…』



私は走る─…

あの人の元へと。

遅くなった、あの約束を、守る為に。

あの人の笑顔を見る為に。


秘密の場所に着くと、大好きな人がいた。

すぐに来てくれたようだ。

私は呼ぶの。
あなたの名を──…


『光輝!』


その言葉を聞いて、
あなたは振り返り、
優しい笑顔で私の名前を呼んでくれるでしょう?


『百合!』


私が光輝の方へと駆け寄ろうとする。


『ストップ!』


すると光輝はこう言い、私の動きを止めた。



『百合!俺彼女と別れた!…俺さ…お前が好き!大好き!百合の笑顔がすごく好きなんだ!ずっと俺のそばで、その笑顔を見せてよ!』


光輝がくれた最高の言葉─…私は泣くより先に、笑顔になった。


百合さん…私ね?
あなたの分まで、生きるよ。

あなたが大好きな人の名前が呼べなかった分──…

私が呼ぶからさ。




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