この声が枯れるまで
私は15年間生きてきて、恋なんかしたことなかった。
小さい頃の夢は、
パパのお嫁さんになる事。
でもその夢は、絶対叶わない。

だけど今…
私は初めての恋をしようとしていた。


《タクミ君、ゆかに言われたんだけど、何か疾風君から聞いてる?》

ゆかに誘われたことをタクミ君に一応確認をする。
するとすぐ返事は返ってきて、内容《聞いてるよ》だけだった。
私は《よろしくね☆》とだけ打って、携帯を閉じる。


『ゆか~タクミ君いいって!』

『ほんま?ありがとう』

ゆかはほっとしたのか、安心したような表情を見せた。

『そういえばいつなの??』

『今週の日曜日やねん』
『分かったよ!』


今週の日曜日は、ゆかの為に頑張ろうと決めた。ゆかの幸せを私は望む。私の幸せよりも。


『百合~』

すると、いきなり光輝が私の名前を呼んできた。やっぱり私の心臓は高くなる。


『何?』


『お前の親父って何やる人?』


『カメラマンだよ?確か…』


目を輝かせた光輝の瞳に吸い込まれていく。
そんな光輝にときめいたのは確かだ。


『まじ?やっぱなぁ~鈴木優さんでしょ?』



『うん…』

『俺、大ファンなんだよね!』

『えっ!本当に?』

パパの事になると、
自分でも分かるくらいに、すごい笑顔になる。
私は笑顔を光輝に向けた。


ねぇ光輝?


何故、今下を向いたの?
あなたのそんな顔、
あまり見たことないよ。




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