この声が枯れるまで
私は今日ここに来ている。
自分が分からなくなると、ここに来てしまうんだ。
私の大好きな場所。
一番落ち着く場所。
私はベンチに座り、街を眺める。
考えてしまう事は、光輝の事。
もしかしたら、私はあの入学式から恋に落ちていたのかもしれない。
あなたの姿…
あなたの笑顔…
あなた全てが、
私の中に入ってきて、おかしくする。
まるで私の中を壊していくようで。
でもそれを止めることなんて出来ない…。
『…恋って難しいな…』
私は桜の木を見上げた。ユラユラと気持ち良さそうに揺れる桜の木。
桜の木のずっと奥に、
綺麗な星たちが輝いていた。
私は立ち上がり、その星を見た。
『きれ~だな…』
パパ…あの星は
誰の星なの?
誰の願いなの?
パパは、この場所でいつも、何を想っていたの?
『帰ろ…』
私はぽつりとこう呟き、家へと帰って行った。
『ただいま~』
元気よくドアを開け、靴を脱ぎ捨てる。
『百合、おかえりなさい』
リビングからはママの声が聞こえてきた。
『今日のご飯は~?』
『あんたご飯の事しか頭にないわね』
『へへ♪あれ?パパは?』
『パパは今日から出張よ?海外に行っているわ』
『え~知らなかった~…寂しいな~』
私は悲しい表情を見せて席に座った。
楓の姿もない。
遊びに行っているのだと思うけど。
『ほら、早く食べなさい。すぐ会えるわよ』
今日のメニューは大好きなパスタだ。
トマトの香りが食欲を誘う。
私とママは向かい合って、いろいろな話をした。