この声が枯れるまで
~第一章・桜の木~
私のお気に入りの場所。
それは、小さい丘に、
ベンチと桜の木が一つ。
何もないけど、
ここから見る街の景色が大好きなんだ。
よく小さい頃、
パパに連れてきてもらった。
大好きな場所。
…─夕日のオレンジ色に染まる街を、私は今日もここから眺める。
『百合…?』
すると私を呼ぶ声が聞こえた。
ゆっくりと振り返ると、そこには私の大好きなパパがいた。
『あっパパ…』
『どうした?』
パパは私の隣に座り、にこりと微笑む。
次第に緊張し出す私。
だってパパは格好いいから。
それに尊敬をしているから…
『ううん…何でもないよ?』
『百合はここが好きだな』
『パパが好きな場所なんだよね?
ママと出会った場所なんでしょ?』
小さい頃、こう教えてもらった。
ここはパパとママが出逢った場所だと。
『ああ…ここでママと出会ったよ…』
『何か嬉しいな…』
『百合は…明日から高校生か…』
『うん…パパの通ってた清秀高校に通えて嬉しい…』
『成長したな…早いな~…もうお前が生まれて15年か…
そして百合が生まれて3年後に、楓が生まれて…早いな…』
『ねぇ…パパの高校時代…どんな感じだったの?』
するとパパは真っ直ぐに落ちていく夕日を見つめた。
パパは何を隠しているの─…?