この声が枯れるまで
その人はニコッと笑顔になり、『こんにちは!お嬢ちゃん。歩って呼んで?』と言った。
笑うと八重歯がちらっと見える。
タクミ君と似ている部分のひとつだ。
私は、その言葉に、引きつった笑顔を見せた。
『ごめんな?親父バカで』
すかさずフォローにはいるタクミ君。
そして私み見て座るように目で合図をした。
私は従い、ソファーへと座る。
『タクミバカ言うな!!お父さんに向かって!!』
『バカじゃん?じゃあアホ?』
『こら!!沙紀ーこっちに来なさい』
歩さんが誰かを呼ぶ。
『沙紀?』
私はタクミに聞いた。
『あぁ…おふくろ』
『あぁ!!』
こっちに向かってくる足音が聞こえてくる。
ゆっくりとドアが開き、そこから出てきたのは、若い女性。
『こんにちは。タクミの母の沙紀です』
『えっ若!!美人!!』
『そう?ありがとう。』
『作ってるだけだから』
『タクミ?あんたいい加減にしなさいよ』
この人がパパの友達なんだ…と見ていると、
『君…優の娘なんだって?優の娘だからやっぱり可愛いね』とこう、紅茶を飲みながら歩さんは言う。
『あっはい…鈴木百合です』
私の名前を言うと、
歩さんと沙紀さんは動きが止まった。
『優…らしいな…
何回その名前を聞いても驚いてしまうよ…』
『え?』
『いや…何にもないんだ。優は元気かな?』
『今出張中ですけど、元気ですよ!!パパの事大好きなんです!』
パパ…
何か隠し事してる。
パパに隠し事があると気づいたのはこの時だった。