この声が枯れるまで
『ん?』
下を向いたままなにも話そうとしない私。
どう言っていいか分からないのだ。
『光輝の事…』
『光輝?』
『うん…光輝って彼女いるよね?』
『あ~いるよ。中3からの彼女が』
やっぱりね、と残念そうに私は思う。
でもヤキモチが溢れだしていく。
『長い…ね、彼女と仲良いの?』
『さぁ?違う学校だし、会えるか分からんらしいよ?…もしかしてさ…』
『え?』
タクミ君は私の発言で気づいただろう。
驚いた表情をして、こちらを見ている。
『光輝の事…好き?』
『えっ?ぇ~…分かんない…』
『何で?』
『恋したことないの。
でもね、光輝を見ていると胸がキューってなるの。変なふうになるの…
私おかしい…』
『それってさ~恋じゃない?』
『恋?』
タクミ君の言葉に疑問を持つ。
『百合は光輝が好きなんだよ!』
改めて言われると納得してしまう自分もいる。
『…やっぱそうなのかな…』
『うん!!頑張れ!』
『でも彼女いるじゃん…』
『分かんないじゃん!!応援するよ』
『ありがとう…あっここまででいいよ?送ってくれてありがとう』
『おう!じゃあまたな!』
『ばいばい』
私はタクミ君と別れ、電車に乗る。
《それって恋じゃない?》
タクミ君の言葉が頭をよぎる。
私…光輝が好きなんだ。
私は自分の新たな気持ちに気付いた。
そして私は、初めての恋をした。
初恋の相手はあなたでした。