この声が枯れるまで
『ちょっと百合大丈夫?』
未紗はぐったりとする私の体を支えてこう言う。私は未紗に笑顔を見せるが、とても安心出来るような笑顔ではなかったはずだ。
『う…ん。全然大丈夫…』
『顔…青いよ?』
『大丈夫!!大丈夫!』
私は元気よく一歩踏み出す。
元気に踏み出した一歩は、順調に前に進んでいき、私は今、恋という戦場の前にいる。
そう、教室の前。
中から、ゆかの大阪弁が聞こえる。
そのゆかの会話の中に、疾風の声も聞こえる。
そして、
『あ~腹減った』と大きな声で叫んだのは、光輝。
光輝の声を聞いた、私の体は更に熱をおびていく。
『はぁ~…変なの…こんなの嫌だな…』
ずっと私はドアの前に立っていた。
一歩が踏み出せなくて困っていた。
『百合?おはよ』
すると私の肩を叩き、挨拶をしたのはタクミ君だ。
『タクミ君!おはよ』
『どうしたん?』
『あ~…はぁ…』
苦笑いを零す私。
そんな私をタクミ君は理解に苦しんだだろう。
でもタクミ君は百合を見て、何かを感じとった。
『…光輝?』
私はその名前を聞くと、驚いてタクミ君を見た。
『なっ…いや違う!!』
焦って隠すがタクミ君にはお見通しのようだ。
『百合…分かりやすいね?』
タクミはそんな私を見て笑う。
そして『先行くね』と私に言って、言葉通り、先に教室に入ってしまった。