この声が枯れるまで

顔を洗い終えると、
私はリビングに向かう。リビングに近付くにつれ、朝食のいい香りが廊下に広がってくる。


『百合、おはよ』

『ママ…おはよ』


リビングに入ると最初にママの笑顔が飛込んで来る。
ママの笑顔が可愛くて、私も笑顔になる。


『百合は、ご飯にする?パンにする?』


『今日はパン!!』


私の答えを聞くと、
ママはトースターにパンを一枚入れた。


しばらく経つと、チンッという音で、パンは焼きあがる。
その音を聞いたママが、パンを取りだし、バターとジャムを塗って、私に出してくれた。
サラダを食べていた私は、サラダを食べるのをやめ、隣に置かれたパンを一口、サクッと口に含む。

この瞬間が好き。
サクッていう音が好き。私が、順調に朝食を食べていると、
リビングに弟の楓が入ってきた。
まだセットされていない髪は、ボサボサのままで、目を擦りながら、椅子に座った。



『楓?おはよ。楓はパン?ご飯?』


『ん~…ご飯』


楓の答えを聞いたママは、茶碗に白いホカホカのご飯をよそい、楓に出した。


『楓あんた早く食べたら?』


楓は私を睨みつけ、
ご飯を一口口に含む。
ふとリビングにあるテレビを見ると、人気のキャスターが元気よく番組を進行していた。




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