この声が枯れるまで

画面は切り替わり、
昨日起こったニュースを話し始める。


─…昨夜、夜道を歩いていた女子大生が、何者かに後ろから襲われ、刃物で刺されるという事件がありました─…


『最近物騒ね…』


ママが昨日あった事件の内容を聞いて言う。


『何か怖いね』

『大丈夫!大丈夫!姉ちゃんを襲うやつなんか居ないって!』


楓は笑いながら、箸を私に向けて言ってきた。
その行動が無償に腹が立つ。


『何よ楓!』


『別に?』


『ほらやめなさい!!もう、朝はいつもこうなるんだから…』


『だって楓が!』
『だって姉ちゃんが!』

『早く食べなさい!』


私の朝はいつもこう。
楓とケンカを繰り返す。でも楓を本気で怒った事はない。
楓はわざと言っているって知ってるから。
本当は、楓は優しい子なんだ。
私知っているから、本気で怒れない。

楓は大好きな弟だから。

『百合?もう7時半よ?』


私はゆっくり食べていた朝食を、急いで口に運んだ。


『やふぁい!(やばい)』


『ゆっくり食べ過ぎよ』

私は最後に牛乳を飲み、ダッシュで部屋へと戻った。
走りながら『ごちそーさま』と言って。





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