この声が枯れるまで
私は教室から走って行った。
すると、誰かにぶつかった。
『百合?』
ぶつかったのはタクミ君だった。
『タクミ君…』
私は潤う瞳でタクミ君を見上げる。
私の瞳を見たタクミ君は、やはり心配し出すのだ。
優しいから…
『百合…どうしたんだよ?』
『何でも…ない…じゃあね…』
『待って!』
逃げ去る私の腕を、タクミ君の大きく細い手が掴む。
『どうしたんだよ?なんかあった?』
『………』
必死でおさえていた涙が、限界を越え、私の目から溢れ出した。
『百合…』
『恋って難しいね』
苦笑いをして私は言葉を零す。
『…思い通りに行く恋なんてないよ』
『ねぇタクミ君?光輝の事教えて…』
『…いいよ…』
私とタクミは場所を変え、屋上に向かった。
今日の空はあまり好きじゃない。
雨なのか晴れなのか分からない天気だから。
『どこから話せばいいのかな…』
『光輝は…彼女の事好きなの?』
『…告ったの光輝だしな…好きだとは思う…
でも彼女も彼女なんだ。光輝がいるのに浮気してるみたいだしさ』
『嘘…』
タクミ君の話が嘘だと信じたかった…
『でも光輝は信じてるみたいよ?』
『そっかぁ…』
タクミの話を聞いて、
私の中の感情が、変な感じになっていくのが分かる。
光輝は辛い思いをしているのだ。
なぜか、同情をしてしまう私。
でもこんな同情、要らないよね─…