この声が枯れるまで

『私…勝手にヤキモチ妬いて変だよね?光輝には彼女がいるのにさ…』



『…百合は諦めるの?』

『だって…無理じゃん?』


視線を下にずらして、
小さく微笑む私。
するとタクミ君が私の頭を軽く撫でた。


『無理じゃないよ…
分かんないけどさ』


『ありがとう…』


私は、光輝の恋を応援する事にした。
光輝が幸せなら…
それでいいと思ったから。

でも人間は、一度好きになった人を簡単に忘れる事が出来ない。

心のどこかで、まだ眠っている好きという感情がある。
そんな簡単に、
忘れる事は出来ない。



…私は授業が始まる前に、タクミ君と別れ、教室に向かった。
教室に着くと、
ゆかが心配をしてくれた。
光輝は、未だに沈んだままだった。

やはり、光輝を見ると、胸がギューって締め付けられる。
光輝の笑顔が見たい。


『光輝?いつまでそんな顔でいるつもり?』


『は?』


『光輝に笑顔がないとつまんないんだけど』


『なんだ…それ』



『笑いなよ?光輝』


『百合…お前って本当馬鹿だな』


光輝はこう言って、
私に笑顔を見せてくれた。
いつもと変わら眩しい笑顔。
今の私には、
光輝の笑顔で十分だ。





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