この声が枯れるまで
今の私の顔は、嬉しい顔ではなく、悲しい顔。
なぜいきなりそんな顔になった原因は、光輝を見てしまったから。

光輝だけを見たなら、
私の笑顔は嬉しい顔のままだっただろう。

でも、違う。
光輝の隣には、女の子がいたから。
多分彼女だろう。
彼女に向ける光輝の笑顔が、とても素敵で、光輝の笑顔を見ている彼女がとても憎くて、私は涙を流す。


『…仕方ない…よね』


私は涙を流したまま、
バス停の方へは行かず、一人寂しく歩いて行った。
もう夕日は完全に見えなくなって、この街に夜が訪れてきた。

私は放心状態のまま、
よく分からない街を一人で歩いていた。

鞄の中にある携帯が何回鳴ったかも分からず、
ただ…ただ…無心で歩く。


『百合!』


私を呼ぶ、聞き覚えのある声。


『…パパ?』


目の前にいたのは、パパだった。



『…どうしたんだよ…
ママが心配してたぞ?』

肩で呼吸をして、息を整える。


『ごめんなさい…』


『でも良かった。見つかって』


パパは私に怒る事なく、いつもと変わらない笑顔で私を見てくれた。
そんなパパを見た私は、涙が零れた。


誰かに助けてもらいたくて。
パパの優しさが、私の傷んだ心に触れる…




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