この声が枯れるまで
私とパパは、家には帰らず、秘密の場所に来ていた。
星空を見ながら、私はパパに言う。
『ねぇ…パパ?』
『ん?』
『何で、恋ってうまく行かないんだろうね?』
『…自分の思い通りにいく恋なんてないよ』
『…難しいね…』
『そうかな?前にね、誰かが言っていた。叶うと思うから叶うんだ。叶わないと思うから叶わないって。百合は…どっちかな?』
この言葉を聞いた私は、素直にこう言う…
輝く星を真っ直ぐに見つめて。
『叶う…叶えたい…』
『じゃあ諦めないで、頑張ってみたらいいさ』
パパは私の頭を撫でてくれた。
タクミ君と同じ温かさが感じられる。
『パパ?その言葉…誰が言っていたの?』
『…さぁ…誰だったかな…』
私はパパをちらっと見た。
星空を真っ直ぐに見るパパの瞳は、すごく悲しい瞳だった。
『パパに話せて良かった』
『…そろそろ帰るか…
ママも心配してるしさ…』
『うん…』
私とパパは、秘密の場所から遠ざかっていく。
パパは、あの言葉を誰からもらったのだろう?
そう不安を抱えながら、家へと帰って行った。
この言葉は一生忘れないだろう。