この声が枯れるまで
~第三章・想い~
ただ普通の毎日が過ぎていく。
私の恋も普通に過ぎていく。
私の街が春に終わりを告げ、夏へと変わっている、ある日。
私の恋のつぼみが、
少しだけ成長をした。
光輝のある一言で。
『百合!連絡先教えてよ!』
無邪気に笑う光輝の笑顔が太陽より眩しくて、私は言葉を失う。
『おい!百合?』
まさかと思った。
嘘だと思った…
私の思考はストップをする。
持っていたシャーペンがコロンと落ちた。
『えー?!』
静かな授業中に響きわたった私の大きな声。
その声で先生に怒られたのは言うまでもないだろう。
そして無事授業が終わり、休み時間。
『あはは!まじあの百合ウケたわ!』
授業が終わっても、あの話題で持ちきり。
私は赤面しながら、言い訳をしていた。
『違う!あれは光輝が!』
光輝を指差して、腹を抱えて笑うゆかに説明をする。
『何で?別に変な事言ってねぇじゃん?』
『光輝彼女いるじゃん!』
『大丈夫!だから教えて?』
『う~ん…いいよ?
でも彼女に怒られたって知らないからね?』
『はいはい!』
顔では、出さなかったが、本当は心臓が飛び出そうなくらい嬉しくて、
そして緊張もしていた。
誰だってそうだと思う。好きな人に連絡先を聞かれたら、一気に気分が上がるだろう。
私は、もう《恋》というものに完全に溺れていた。