この声が枯れるまで
今の時間は、8時10分。
ギリギリ間に合う。
私は家を元気に飛び出した。
『いってきま~す!!』
『気を付けてね!!』
『はいは~い!!』
急いでバス停に行く。
今日の天気は晴れ。
最高の日になるに違いない。
バス停に近付くにつれ、見慣れた顔の女の子が一人、立っていた。
『あっ未紗~!!』
『百合~!!』
私は未紗という彼女にに手を振った。
未紗も気付いて、私に手を振った。
『ごめんね!!??待った?』
『全然!!バスに乗ろ?』
私と未紗はちょうど来たバスに乗り込む。
そして空いていた席に座った。
未紗は中学校の時からの大親友。
すごく優しくて、大好きな友達なんだ。
『何か緊張するね~!!』
私は不安そうに鞄を抱えて未紗に言う。
未紗も私と同じような表情を見せる。
『そうだね~!!いい人いるかなぁ?』
未紗の言葉の意味は異性を示している。
だけど私は…興味ない。
『私は興味ないや~…』
だからこの言葉が零れたのだ。
『百合可愛いのにもったいないよ!!』
『う~ん…』
『多分そのうち出来るよ!』
『そうだね♪』
私は一度も彼氏が居たことはない。
告白はよくされるが、
付き合いたいとは思わないからだ。
本当の恋なんて知らない。
そして、本当の愛も知らない。
私は、愛の意味なんか知らなかった。
でもパパは…この高校で愛の意味を知ったんだね。