この声が枯れるまで
『お前何してんだよ?終わったら門って言っただろ?』
門に着いた途端、光輝の説教から始まった。
『ごめんごめん…』
形だけ謝る私を光輝は真剣になって怒る。
『ったく馬鹿百合!』
『馬鹿ってなによ!あほ光輝!』
『俺があほありえねぇ!』
『光輝?』
すると突然聞こえた、光輝と呼ぶ、低いトーンの声。
私は振り返る。
そこには、学ラン姿で、茶髪にピアスをした、
かっこいい男の人が立っていた。
『おっ修!』
えっ修?
この人が修??
『…百合?』
修君が私を呼ぶ。
でも私は答えられない。だって今の私は、呆然と立っている事しか出来ないから。
『しゅ…修…君?』
やっと思いで声が出た。
『うん!俺が修!初めまして』
修君が私に手を差し出した。
大きな細い手。
私はおそるおそる修に手を出す。
握手をした瞬間、修君が私に笑顔を見せてくれた。
私は修の笑顔に安心する。
でも、光輝とは…何かが違う。
心臓も動かないし、頬も赤く染まらない。
光輝はやっぱり特別なんだ。