この声が枯れるまで


―清秀高校前。
バス内にアナウンスが流れる。
未紗と喋っていたら、すぐ高校に着いた。
学校にはたくさんの人と、ヒラヒラと舞う桜の花びら。

『何か楽しくなりそう!!』

『行こ~!!』

私と未紗は、楽しそうに走って校門をくぐった。この弾む胸は、なにを表しているのだろうか?

私達はクラス発表のある掲示板を見に行くため、大勢の人の中に埋もれていた。


すると私は人混みから、ある人を見つけたの。
桜の木の下に、ボーっとしている人がいた。
私はその人に目が奪われる。

背はそこまで高くないが、華奢な体をして、茶色の髪の毛。
雰囲気がすごく爽やかでかっこいい人。

私はしばらく見つめていると、その人が私に気がついた。


『あっ…』


慌てて私はこんな言葉を発してしまう。


『…何?』


彼の瞳が真っ直ぐで。
魅力的だった…
言葉が出なくなってしまった私は、黙ってしまう。


『見んなよ』

するとこう彼が言って、視線を逸らした。

今までドキドキしていた心臓が、彼の言葉で、一瞬にして止まった。

そして、彼への第一印象は最悪。

私は未紗に、『うざっ』と愚痴を零す。


『え?何が?』


未紗は驚いて辺りを見渡す。


『あの人!!』



『どれ!?人多すぎて分かんない!!』



『…いなくなっちゃった…』


私はさっき彼がいた場所を指差したが、もうそこには彼の姿はなかった。目に映るのは、桜色だけ。

『そっか~見たかったな!』


『最っ悪!』



あなたへの印象は、
最悪だったんだよ…。

でもどうしてかな。
もう私の心は奪われていたの。




< 6 / 126 >

この作品をシェア

pagetop