甘いシロップと香辛料
そして、静かに口を開いた。
「育てられるのか?おまえに」
優しい、でも、厳しい言葉。
薫はうなずいた。
「俺は、自分をダメにしても育てる。咲と子供をずっと守る。咲と子供を守るのは、俺しかできないと思う。いや、俺しかできないよ」
薫は、まっすぐ親を見つめた。
あたしはうつむくことしかできない。
「咲さんは、育てる自身はあるのか?」
「あっ…はい、もちろんです!」
裏返ってしまいそうになった声。
いまにも悲しみがあふれそう。
あたしがそういうと、薫のお父さんは優しく微笑んだ。
「なら、すきにしなさい」
あたしの目からは、涙が零れ落ちた。
薫は、優しくあたしを包み込む。
「やった…、咲。おなかの仔、一緒に育てようね」
「うん…か…おる…」
あたしはその夜、薫の家にとまった。
薫のお母さんの手料理は、
あったかくて、
おいしかった。
久しぶりに食べた手料理。
涙がこぼれそうなのを必死におさえた。