迷える子羊×不器用男子
只今午後5時。一人の帰り道。
11月だし、暗いし、寒いし。
『歩いて帰るとか意味わかんないッ!!』
部活帰りのあたしはヘトヘトだった。
「ま…ゆ?」
この声ッ…
背筋が凍る。この声の主は分かってる。聞き慣れていた声。
そっと後ろを振り返ると
『健吾…』
「なんで先に帰っちゃうの?俺ず~っと待ってたよ?」
『だってもう別れっ…キャ!』
強く強く抱きしめられた。
「俺、真柚がいなきゃダメなんだ。“別れた”なんて言うなよぉ…」
健吾の腕の中は暖かくて、なぜか安心できた。
あんなことされたのに…。
「真柚のこと叩いたりして…俺どうかしてた」
『ぅ…ん』
「俺とやり直してくれないか?」
もっかい健吾を信じてもいいのかな。
きっと同じことはしないよね…。
『ぅん…』
あたしは健吾にYesの答えを出した。
「サンキュ」
健吾はあたしの短い髪に指を通し、優しく唇にキスをした。
「好きだよ。真柚」
少し喋って、あたしも健吾も帰った。
『ただいま』
あたしは自分の部屋に入り、携帯を開く。
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メールだ。誰だろ??
『健吾だ…』
――明日も一緒に帰ろうな――
好きだよ。って言われたとき正直素直に喜べなかった。