君だけしか映らない
荒川は来てくれるのだろうか…?



オレは旧校舎の非常階段で荒川を待ちながら、溜め息をつく。



ここはほとんど誰も来ることのない人気のない所だ。

ここなら荒川と二人でいても安心だ。



期待と不安な気持ちで荒川を待っていると―――




「佐伯くん…お昼ご飯買ってきたよ…。」


オレを捜しながら少し戸惑った様子で荒川がやって来た。



「あぁ…こっち。」



「あの…これお昼ご飯…」


そう言って渡された袋の中を見てオレは驚いた。



「も、もしかして嫌だった…?佐伯くん甘いの好きだって言ってたから…。」



「いや…これスゲー好き」


自分の好物の生クリームパンだったことも嬉しかったが、何より荒川が甘いものが好きなオレの為に、このパンを選んでくれたことの方が嬉しかった。



(甘いものが好きだって覚えていてくれたのか…)



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