君だけしか映らない
「なんで…こんな場所に呼び出したの…?」



少し伺うように荒川はオレに問いかける。



「…ここ誰も来ねーから。ここならお前とゆっくり話せる。」


「話せるって…。別にここに来なくても教室とかでいいじゃない…。」



「人が多いと色々とうるせーだろ。現にお前昨日大変だったろ?」



オレがそう言うと、荒川も町田に呼び出されたことを思い出したのか、咄嗟に表情を曇らせる。


「ま、まぁ確かにそうだけど…」


「ここなら誰にも邪魔されない。屋上だとアイツらがいるし。それにお前…ハルのこと苦手だろ?」



「えっ…!」



ハルの名前に荒川は明らかに動揺した。



「な、なんで…そんなこと聞くの?私は別に加藤くんのこと…苦手とか思ったことないよ…。」



無理して笑う荒川に胸が痛む。オレに気を遣っているのか、ハルのことを悪くは言えないのだろう。



「アイツ思ったことすぐに口に出すからさ。…悪かったな。」



「そんな…佐伯くんが謝らないでよ。私は気にしてないからさ。」


「無理すんなよ。…それとオレもこの前は言い過ぎた…悪かった。」


「え…?」



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