君だけしか映らない
「なっ…ちょっと!!いきなり何するのっ!」



突然のことで荒川は腕の中でじたばたと暴れる。



「は、離してよっ!!」



必死に抵抗する荒川は、懸命にオレの腕の中から離れようとする。



「うるさい。黙ってろ。」


…逃してたまるものか。
オレは更に強く荒川を抱き締めた。



「そ、そんなこと言ったって…!」



訳も分からず抱き締められた荒川は、最初は抵抗したものの観念したのか大人しくなった。



(好きな女を抱き締めるって、こんなにいい気分なのか…)



自分の腕の中に荒川がいる…。心臓がうるさいくらいにドキドキして荒川にも伝わってしまいそうだ。


かすかに香る荒川自身の匂い。


香水をつけたケバい女たちとは全然違う、心地いい匂い。



「…落ち着く。」



オレは自然とそんな言葉を呟いていた。



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