君だけしか映らない
さっきまで暴れていた荒川は、オレの腕の中で固まって動かない。



「…だいぶ大人しくなったな」



「…………。」



オレの問いかけに荒川は答えようとしない。


この状況で無視かよ…


「…おい、聞いてんの?」


そう言ってオレは抱き締めていた手の力を緩め、荒川の顔を覗き込んだ。



「や、やだっ!!見ないで!!」



そしてオレの目に飛び込んできたのは、顔を真っ赤にして少し困った表情をした荒川だった。


話しかけても反応がなかったから怒っているのかと思っていたが…


これは予想以上の反応だ。


「っ……!!その顔は反則だろっ」



「え……?」



すると、オレの言葉に荒川は急に暗い表情になる。



あ………


もしかしてまた勘違いしてるのか…?



「そーゆー意味じゃねーよ!!お前が…その…あんまりにも真っ赤になるもんだから…スゲーかわ…」



かわいくて抑えがきかなくなりそうだった。



自分でも自覚する程の恥ずかしい言葉に、最後の方は口ごもってしまい荒川には聞こえていないかもしれない。



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