君だけしか映らない
「お前…これでもまだわかんない?オレがお前と二人きりになりたいって言った理由?」



「えぇっと…もしかして私抱き枕がわりとか?」



「…………。」



マジで言ってんのかよ…?ここまでしてるのに気付かないのかよ。



オレはそんな簡単に女を抱き締めたりしねーよ…。




「だって…!!私のこと…だ、抱き締めて『落ち着く』って言ったじゃない!確かに私は痩せてる方じゃないから、それなりに抱き心地はいいかもしれないけど…」



「お前それ…本気で言ってんの?」



「だって…人前じゃ抱き締めるなんてことできないじゃない!ここなら誰も見てないから…。二人きりになりたい理由ってそれしか思い付かないよ…。」



「は〜…」


思わずオレの口から溜め息が漏れる。



「まぁ…わからないならいい。」


「えぇ!!よくないよっ!ちゃんと教えてよ!!」



荒川には“自分は好かれている”というような選択肢はないように感じる。


普通は抱き締められて『抱き枕がわり』なんて考えないだろ?



…これはかなり手強いな。


「今はまだ言わない。お前が自分で気付くまでは。」


「ちょっと何それ!?」




まだ言わない。


オレがどれだけお前のことが好きか、全然わかってないだろ?


だからこれからもっと思い知らせてやるよ。



お前の心の中がオレだけになるように……―――


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