君だけしか映らない
―――笑美が屋上を去った頃。
「おい悠哉〜。また委員長ともめてたのかよ?」
「あんまりいじめるなよ〜」
今のやり取りを見ていた仲間たちが口を交互に開く。
オレと荒川のパシリ関係をいつも近くで見てるこいつらは、もう慣れたのかふざけた感じで言ってくる。
するとハルが近付いてきてこっそり耳打ちする。
「また委員長にフラれたな。」
「うるせーよハル…。またって言うな。」
『人をパシリにする程、佐伯くんは私を良くは思ってないんだよね?…私だって別にアナタのことなんて…。』
正直、あれ以上荒川の言葉を聞く勇気はなかった。
「相変わらずお前と委員長ってなんも進歩しねーよな。それに携帯番号も今頃やっと知るとか、どんだけ奥手だよお前。」
「…うるせーよ。」
「でもお前に言い寄られて落ちない女がいるとはな〜。委員長も相当手強いな。」
「…なんでそんなに嬉しそうなんだよお前は。」
「だって学校1のモテ男が、地味な委員長相手に手こずってるんだぜ。そりゃ面白いに決まってんだろ?」
「………。」
いつもそうだ。
荒川を前にするとなかなか素直になれない。
その為、ハルの言う通り一向に距離は縮まらない。