ショコラ番外編~小さな恋の終わり~


「嫌だ、パパにあげるに決まってるでしょ、ねぇ、比奈」

「ぱーぱ」

「パパきっとその日は、早く帰ってきてくれるよねー」


嬉しそうな顔がいらつく。

どうしてそうなの。

どうして。

人の事、散々傷つけておいてそんな平気そうな顔して笑うのよ。


「お姉ちゃんは、いいよね」

「……沙紀?」

「ふられたって慰めてもらえて。
何もなかったように結婚して、子供もできて。
いい御身分だよ」

「……」

何を言ってるんだろう。

こんな事、この人に言ったって仕方ない。

まして比奈の前で、こんな事言うの間違ってる。

それは分かってるけど、おさまらない。

胸の奥のもやもやは、もう抑えきれないほど溜まっていて。

このままじゃ私の全身が真っ黒にすすけてしまいそう。


「私っ……」


その時、私の背後から声が響いた。


「亜紀さん」


瞬間、大きく跳ねた心臓。

現実の音が消えて、その声だけが耳に響いた。
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