ショコラ番外編~小さな恋の終わり~
徐々に戻ってくる周りの音と一緒に
響いてくるのは靴音。
正面に見えるお姉ちゃんの顔には、驚きと困惑の色が見える。
振り向くのが怖くてただ立ちつくす私の背中に、再びその声がぶつかった。
「亜紀さん、だろ? 久しぶり」
「……徹くん」
お姉ちゃんの決定的な言葉に、私は後ろを振り向いた。
柔らかそうな茶色の髪、
少しこけた頬、
ダウンジャケットの中には薄手のセーター。
今日はあんまりチャラい格好じゃない。
彼は少し眉根にしわを寄せて、けれども口元は緩く笑みをかたどっていた。
驚愕と歓喜の相混じったような彼のその表情に、
私はますます泣きたいような気持になった。