ショコラ番外編~小さな恋の終わり~
彼は私の事なんか本当に眼中になくて、
お姉ちゃんを食い入るように見つめている。
「その子、……娘さん?」
白い息と共に吐き出された言葉に、お姉ちゃんは黙って頷く。
「……そうかぁ。かわいいな」
くしゃりと、彼の顔つきが歪む。
苦笑って言えばいい?
悲しそうな笑い。
その表情に再び、私は傷つけられる。
「ちょっとだけ、話してもいい?」
重ねられる彼の言葉に、お姉ちゃんは迷いながらも頷いた。
そして目を伏せたまま、小さな声を出す。
「ごめん、沙紀。ちょっとだけ、比奈の事見ててくれる?」
「それって」
「ちょっとだけ、話をするだけ」
私は思わず、彼を睨んだけど、彼は肩をすくめるだけだった。
比奈を渡そうとするお姉ちゃんにも、なんか言ってやりたかったのに、言えなかった。
「まーま……」
小さく呟く比奈が乗ったベビーカーを押しながら、
近くの公園へと移動する2人の後ろを、少し離れてついていった。