ショコラ番外編~小さな恋の終わり~
「沙紀、私ねぇ」
お姉ちゃんの言葉は雪みたいに、吐き出されては空気に溶けて行く。
「徹くんの事、あの時、本気で好きだったんだぁ……」
その言葉に含まれる感情は、後悔?それとも、郷愁?
「……婚約者がいたのに?」
「ええ」
きっぱりと言う姉の姿が、何故だか光を放つように見えて、目をそらした。
「でも今は違うわ。私はパパが大好き。ね、比奈」
「まーま」
「……沙紀には分かってもらえないかな。ごめん。もう帰るね」
買い物袋を受け取って、ベビーカーを押すお姉ちゃん。
もう母親なのに、女力抜群のお姉ちゃん。
そう、痛いほどに、女だからだ。