ショコラ番外編~小さな恋の終わり~
「……そういうこと?」
私は拳を握る。
苛立ちの感情の訳に気づいて。
悔しいほどの嫉妬が胸を焦がす。
私は後ろを振り向いて、彼の姿を探した。
彼はすでに歩きだしていて、少し曲がった背中を見せながら遠ざかっている。
「……待って!」
走り出した。
遅い自分の足がもどかしい。
気持ちに反して上手く動かない。
「中本さん……っ」
私の声に、彼がぴたりと立ち止まる。
まるで、スローモーションのビデオでも見てるみたいに、
ゆっくりと振り向いたその表情に名前をつけるとしたら「驚愕」だろうか。
「……沙紀ちゃん?」
名前を呼ばれるのは、何年ぶりだろう。
「あの、ちょっと待ってください」
息を荒くしながら、私は彼に近づいた。