低温の哀で君を壊す
だからそばに居てほしい。
それ以上も以下もいらない。
俺だけを見て、俺だけを必要として、求めてほしい。
奏は妹だけど妹なんて思ったことなかったよ。
「ん…」
人差し指でゆっくり顔をなぞるとくぐもった小さな声が無防備な口から漏れた。
起きたのか?そう思って滑らかな肌をなぞる指を止めて見る。
奏はくしゃっと顔を歪ませてみたものの黒目がこちらを向く事もなくいまだ起きる気配がない。
ごめん、なんて口だけの謝罪を今更する気なんてさらさらないけど無茶をさせてしまったことはちょっと申し訳なくなる。
あんな風に煽る奏が悪いから歯止めなんて効かないし、俺に理性なんてものが備わっていたら最初からこんな関係にはなっていなかった。
これでも我慢はできる性分だと思っていたんだけどなー。とんだ勘違いだった。
俺はちっとも我慢なんかできない。
それも奏のことになると尚更周りが見えなくなってしまう。
くすぶっていた何かが崩れたあの日
俺が奏と体を重ねたあの日
死ぬほど苦しくて、でも死ぬほど幸せを感じた。