低温の哀で君を壊す
どうして愛し合う為の方法がこんな行為なのかは分からない。
だけど俺は抱き合う術を知りまんまとその行為にハマってしまった。それも貧欲なほどに。
俺は男で奏は女。人間と人間。
愛し合えない理由なんてどこにも見当たらなかった。あったとしても、そんなの些細なことに過ぎない。どうでもいい。ちっぽけだ。こんな無駄に広い宇宙と生命体の神秘さを前にしたら到底適わない。
「んぁ、や――響…っ」
――ねぇ、可笑しいの、俺って
妹に欲情してる。他人ではない女。
血は確かにちゃんと繋がっていた。
それでも俺にとっての大切な女は昔から奏だけだった。
大事にしたいと思う感情は真っ白で濁りはない。
俺が守ると誓った約束は今もここにある。
数年の時がたった今でさえ忘れられない。
忌々しい記憶。脳裏にこびり付いて離れやしない憎悪。奏はまだ覚えているのか?忘れているならそれはそれでいい。無理して思い返すようなもんじゃない。何にしたって俺は奏を離さないから。
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「響、夕飯の支度はしてあるから。食べたい時奏の分も温めて一緒に食べてちょうだい」
「……わかった」
「お母さん出掛けてくるから」
厚い化粧にキツい香水を振りまいて着飾る母親。あまりにもキツいその匂いにさっさと消えちまえ、と顔をぐしゃっと歪ませる。
「…ママどこ行くの?」
「大人しくしていなさいね奏」
「っや!ママ行かないで」
この時の俺は小学6年生。奏は小学2年生。
俺はなんかもう、どうでもよくて母親がどこで何をしていようが興味がないから口を出すつもりなんてなかった。
高学年にもなればある程度のことは理解できていたし母親がこうやって着飾る理由も予想がついた。でも奏はまだ小さい。母親を恋しいと思うのは当然だ。