低温の哀で君を壊す





俺も愛されてないけど奏も愛されてない。


可哀想だなー、俺たち。


誰からも必要となんかされてないよ。




「っに、に」

「ん?」

「ずっ…と、一、緒っ?」

「うん。ずっと一緒」



泣いて掠れる舌たらずの言葉が愛しい。


もっとぎゅーっとすれば「苦しいよ」と笑う奏に俺もつられて笑った。


俺が本当にひとりぼっちだったら、こんな息が詰まりそうになる家に居られなかった。


だけど奏が居る。

俺を必要としてくれている。


それだけでいいんだ。

その笑顔があるから俺にも居場所がある。


感情を殺すことには慣れているけど、奏を見てるとそんなことさえ馬鹿らしく思えてくるよ。大丈夫。俺たちはずっと一緒。愛されてないなら俺がいっぱい愛してあげる。




それから俺は前以上にとことん奏を甘やかして、いつも一緒に居た。


クラスでは協調性というものがない俺は単独行動ばかり。可愛げがないというか大人ぶっていたというのか、とにかく周りにいる奴らと俺は違うんだって自分の中で境界線を作り距離をとる。


あんな奴らと一緒に居てもつまらない。いらない。仲良くする気がさらさらない俺に担任のセンセーは何を勘違いしたのか俺がいじめられてるんじゃないか、と余計な心配をしては気にかけてくれていた。でも俺にとってはそれさえもうざったくて仕方ない。


別に俺が一人でも誰にも迷惑かからないんだし、いいじゃん。



「俺に構わないで下さい。いじめられてなんかないし大丈夫ですから」



人間はめんどくさい。いちいち傷つけ合わなきゃ解らない。俺なんか気にしてる余裕があるんだったら、武田に声をかけてあげればいいのに。俺なんかよりもアイツのほうが格好の餌食としていじめられていますよ。そう担任に言ってもよかったけど、俺には関係ないからやめた。


大人って見えているのか見えていないのかよく分からないなあ。
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