恋愛温度、上昇中!

とにかく買いに行くわよと、祥子が私を引っ張って私がいくものかと踏ん張って二人で綱引きをしていたら携帯が鳴った。私のだ。
急に手を離したから祥子はすっころんだ。気にしない。

「はい?」
『俺だ』

誰だ。

もう一度、携帯を離して画面を見る。
そこには、関谷、と表示されていた。なぜ。


『今暇か?出かけるぞ』
「えっ?いや、無理。今友人が来てるし」

というか、なんで。

『友人?今日一緒の?』

パーティのことだろう。私はうん、と頷く。

『ちょうどいい。一緒に来い』
「ええ?なんで?!」

つい声を上げれば、祥子が近付いた。
どうゆう事だ。携帯を離して祥子に説明したらちょっと代わりなさいと私の手から携帯を取り上げる。

「関谷さん、松前祥子です。今夜はよろしく。…ええ。いえ、私はかまいません、間に合ってますから。紗織は是非是非是非お願いしますね。そうそう頭が固いので上手く丸め込んでくださいね。あ、サロンの方はもう予約してるので二時までには返して下さる?…わかりました。それではまた」

ピッとデコレーションされた指先で祥子は携帯を器用に操作する。

「し、祥子?」
「さて、と」

祥子はうーんと体を伸ばして、いそいそとバッグを手に取り玄関に向かう。いや待て、さてとじゃない。何急に帰り支度してるの?おかしいよね?色々おかしいよね?

「ちょっと!なんだったわけ?」

「紗織、あんたの焦るとことか見るのはそれはそれは嬉しいんだけど、今はいいわ。後のお楽しみにしとく。今から関谷さんが来るからさっさと着替えて準備しなさいね」

「はっ⁉︎」


祥子はポンっと私の肩を叩いてそれからチュッと手のひらからキスを投げるとヒラヒラと手を振って出ていった。
残された私は、呆然と立ち尽くす。
なんでみんな説明という極基本的な事を抜かすんだ。
関谷が来る?何をしに?

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