恋愛温度、上昇中!
年齢イコール彼氏いない歴という訳じゃない。結婚だっていつかしたいと思う。だけど相手はもう何年もいない。出来る気もしないし、そんな簡単にこれだと思える出会いなんて転がってない。
動く気力もなくそのままうつ伏せになっていた耳に響いたのは無機質な携帯音。
『紗織さーん』
元気よく若さを振り撒く声の主は、利発的なショートカット、キュートな笑顔を持つ後輩のマチちゃん。私の事を唯一『紗織さん』と名前で呼んでくれる子だ。
「マチちゃん?お疲れ様」
明るい声に吊られて口の端が上がる。
『今から暇ですか?』
「今から?」
『ええ!!飲みにでも行きません?』
マチちゃんの大きな目が輝いているのが携帯越しでも想像出来る。
私と一緒にいて何が楽しいのかさっぱり分からないけどマチちゃんは時々こうして誘ってくれる。
既に部屋着でだらけた格好をしているけど、いつもはおひとり様な私にそのお誘いは純粋に嬉しかった。
「分かった、すぐ行く」
飲みたい気分だったのは間違いないし、投げ出した服もまだシワはついてない。髪を結び直すと急いで着替え直すとマチちゃんが先に行ってますと言った居酒屋へ向かった。