恋愛温度、上昇中!
向かったのはこの間と同じ居酒屋。
会社からも近いからうちの会社の子もよく来るみたいでこの間のような事もあるけれど、値段も安くて洒落た感じなのに気軽に入れるし一人の時も誰かと一緒の時も、ここを利用するのが殆どだ。
通されたのは奥の個室。二部屋繋がっていて今は隣と襖で仕切られている。
「とりあえず生」
「私はカシスオレンジで」
店員さんが、愛想よく出て行った後、マチちゃんは呆れたように笑う。
「本当、紗織さんって親父ですよね」
「マチちゃんひどい」
「とりあえず生、って発想が古いですよ」
発想じゃなくてただの注文なのに。マチちゃんは思った事をオブラートに包まず発言するタイプだ。私もそうかもしれないけど。
「どーしてあんな可愛いデザインが思い浮かぶのか不思議です」
マチちゃんは心底不思議そうに首を傾げる。この素直で飾らない反応はマチちゃんらしくて好きだ。
「でも分かる気もするとゆうか…」
うんうんと頷くマチちゃん。分かる?分かっちゃうの?物凄く複雑。
「だけど次の企画、どーするんですか」
マチちゃんは運ばれてきたグラスに口を付けながら心配そうに覗き込む。
山都さんの『ベッドに誘われた事がない無垢な感じ』という若干的を得た為に失礼に感じる言葉が同時に頭を巡って、急いで追い出した。
「そうよね、『大人の余裕』ってどうしたらいいかしらね」
ああ、また頭痛がする。